「手術と言われたけれど、本当に受けるべきなのか」「できるだけ体に負担の少ない方法はないのか」——腰の手術を前にして迷うのは、とても自然なことです。このページでは、腰の手術を検討している方が知っておきたいことを、脊椎を専門とする立場から順を追ってお伝えします。
まず知っていただきたいこと:多くの腰の症状は手術をせずに改善します
腰痛や脚のしびれは、症状が出はじめた段階では、飲み薬・リハビリ・ブロック注射といった保存療法で軽くなることが多くあります。ただし、これは「ずっと手術をしなくてよい」という意味ではありません。症状が長引いたり進行したりすると、保存療法だけでは改善が難しくなり、手術が有効な選択肢になることがあります。手術は「保存療法で改善しない」「神経のマヒが進んでいる」といった場合に検討します。当院でも、いきなり手術をすすめることはありません。
一方で、次のような場合には手術で大きく改善が見込めることがあります。
- 一定の距離を歩くと脚がしびれて休まないと歩けない(間欠性跛行)が続く
- お尻から脚への痛み・しびれが保存療法でよくならない
- 脚に力が入りにくい、足首が上がりにくいなどのマヒが出てきた
- 排尿・排便がしづらい(この場合は早めの受診が必要です)
「手術が必要かどうか」は精密検査で判断します
手術をすべきかどうかは、症状と画像(レントゲン・MRI・CTなど)を合わせて総合的に判断します。原因となっている神経の場所を正確に特定することが、適切な治療の第一歩です。
代表的な腰の病気
腰部脊柱管狭窄症
加齢などで黄色靱帯という組織が厚くなり、神経の通り道(脊柱管)が後方と側方から狭くなって神経を圧迫します。間欠性跛行が代表的な症状です。
腰椎椎間板ヘルニア
背骨のクッション(椎間板)の一部が飛び出し、神経を圧迫して、お尻から脚へ放散する痛みを起こします。
腰の手術にはどんな種類があるの?(全体像)
ひと口に「腰の手術」といっても、方法はさまざまです。大きくは、次の2つに分けられます。
- 除圧術:神経を圧迫している骨や靱帯を取り除き、神経の通り道を広げる手術です(例:椎弓切除術、内視鏡下のFEL など)。
- 固定術:背骨のぐらつき(不安定性)が強い場合に、背骨を安定させる手術です(例:椎体間固定術、OLIF、内視鏡下のPETLIF など)。
さらに、それぞれに従来の大きく切る方法と、内視鏡を使う低侵襲な方法があります。どれが最適かは、狭くなっている・ぐらついている場所や範囲、背骨の状態によって変わります。
当院では、椎弓切除術・椎体間固定術・OLIFといった標準的な手術も行いながら、体への負担が少ない内視鏡手術(FESS)を得意としています。「内視鏡ありき」で決めるのではなく、患者さん一人ひとりにとって安全で、困っている症状を最大限取り除ける方法を一緒に選びます。次の項目で、その低侵襲手術(FESS)について詳しくご説明します。
体への負担が少ない「内視鏡手術(FESS)」という選択肢
FESS(全内視鏡下脊椎手術)は、約8mmの小さな傷から内視鏡を入れて行う低侵襲な手術です。従来の手術に比べて傷が小さく、体への負担や入院期間を抑えやすいのが特長です。
下の図は、椎間板ヘルニア手術の「傷の大きさ」を手術方法ごとに比べたものです。
当院では、病状に応じて次の内視鏡手術を行っています。
- FED(椎間板ヘルニアに対する椎間板摘出術)
- FEL(脊柱管狭窄症に対する椎弓形成術)
- PETLIF(脊柱管狭窄症に対する内視鏡下の椎体間固定術)
ただし、内視鏡手術がすべての方に最適とは限りません。背骨のぐらつきが強い場合などは、椎弓切除術や固定術のほうが適していることもあります。当院では「内視鏡ありき」ではなく、患者さん一人ひとりにとって安全で、困っている症状を最大限取り除ける方法を一緒に考えます。
▶ 内視鏡手術(FESS)の実際の手順や症例については、脊椎内視鏡手術のページで詳しく解説しています。
費用や入院期間について
多くの脊椎手術は健康保険が適用されます。さらに高額療養費制度により、1か月(同じ月内)の窓口での自己負担が、所得に応じた上限額までに抑えられます。
同じ月のうちに入院・退院を済ませると、この上限がひと月分で済むため、自己負担を抑えやすくなります(月をまたぐと、上限が2か月分かかることがあります)。
一般的な所得の方の場合、1か月あたりおおよそ8〜9万円程度が目安とされてきましたが、所得区分や制度改定によって金額は異なります。また、入院中の食事代や差額ベッド代(リース代など)は高額療養費の対象外で、別途かかります。
具体的な金額は、加入されている健康保険・所得区分・その時点の制度によって変わりますので、事前に病院の事務(医事課)や保険者にご確認ください。
担当医について
担当医(油井 充)は、令和4年4月時点で埼玉県の常勤医で唯一の日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定医(3種・経皮的内視鏡下脊椎手技)です。全国で40名しか取得していない資格を持ち、FESSを執刀しています。
ご相談・受診について
手術ありきではなく、保存療法を含めた選択肢をご説明します。セカンドオピニオンにも対応しています。
さいたま記念病院 整形外科
〒337-0012 埼玉県さいたま市見沼区東宮下字西196
代表:048-686-3111
外来予約:048-793-4874
油井 充 医師の外来にてご相談いただけます。
腰の手術は、正しく情報を知り、納得したうえで選ぶことが何より大切です。迷っている段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
手術が不安な方へ ── よくある不安と答え
Q. 手術が怖いです。受けるべきか決められません。
迷って当然です。当院は「手術ありき」ではなく、受けるべきかどうかの判断からご相談いただけます。急いで決める必要はありません。
Q. 全身麻酔が心配です。高齢でも受けられますか?
持病や全身状態を確認したうえで、麻酔科と連携して安全に配慮します。ご高齢の方でも、体への負担が少ない方法を検討できる場合があります。適応は診察で判断します。
Q. 手術が失敗して、歩けなくなることはありませんか?
どんな手術も100%安全ということはなく、合併症の可能性はゼロではありません。一方で、腰の手術が原因で車椅子生活になった患者さんを、これまで診たことはありません。リスクとメリットの両方をご説明したうえで、一緒に判断します。
Q. 手術をしても、しびれや痛みが残ることはありますか?
長く神経が圧迫されていた場合などは、症状が残ることがあります。残った痛み・しびれに対しては、脊髄刺激療法(SCS)という選択肢もあります。
Q. 入院や仕事の休みは、どのくらい必要ですか?
手術方法や職種によって異なります。目安は受診時にご説明します。
Q. 迷っているのですが、相談だけでもできますか?
もちろんです。セカンドオピニオンにも対応しています。まずはお気軽にご相談ください。
▶ 実際の受診から手術・退院までの流れは、こちらのページで詳しくご説明しています。
ご相談・ご予約
「そろそろ手術を考えた方がよいか」「今の診断で合っているか」など、迷われている段階でのご相談・セカンドオピニオンも承ります(さいたま記念病院 整形外科)。