1. はじめに:ヘルニアの手術を検討されている方へ
「椎間板ヘルニアで手術が必要と言われたが、体に負担がかかるのは怖い」
「仕事に早く復帰したいけれど、長期間の入院は避けたい」
足の激しい痛みやしびれ(坐骨神経痛)に苦しむ患者様から、このような切実な声をよく伺います。
現在、脊椎外科の分野では技術が進歩し、FESS(フェス)やFED(フェド)と呼ばれる、極めて低侵襲な(体に優しい)完全内視鏡手術が選択できるようになっています。
本記事では、この最新の内視鏡手術がどのようなものか、専門医の視点から分かりやすく解説します。
2. FESSとFEDの違いとは?(用語の整理)
医療用語は似ていて混乱しやすいですが、整理すると以下の通りです。
- FESS(フェス)
- 正式名称:Full-Endoscopic Spine Surgery
- 意味:「全内視鏡下脊椎手術」の総称です。
- FED(フェド)
- 正式名称:Full-Endoscopic Discectomy
- 意味:FESSという手法を用いて、「椎間板ヘルニアを取り除く(Discectomy)」具体的な手術名です。
つまり、「FESSという最先端の技術を用いて、ヘルニアをピンポイントで摘出する手術がFED」だと考えていただければ間違いありません。
3. FESS(FED)手術の4つの大きな特徴
私が「自分や家族が受けるならこの治療」と考える、FESSならではのメリットをご紹介します。
① 傷跡はわずか約8mm
従来の手術(顕微鏡手術など)では数センチ切開しますが、FESSは1cmに満たない小さな傷口で済みます。
② 筋肉へのダメージを最小限に(低侵襲)
大きな切開をしないため、背中の大切な筋肉を骨から剥がす必要がありません。これにより、術後の「腰の重だるさ」や「痛み」が劇的に軽減されます。
③ 出血が少なく、身体への負担が軽い
内視鏡で患部を拡大して精密に確認しながら操作を行うため、出血は極めて少量です。
④ 圧倒的な回復の早さ(早期社会復帰)
身体へのダメージが少ないため、多くの場合、手術当日から歩行が可能です。入院期間も2泊3日で、早期の社会復帰が実現します。具体的にデスクワークですと術後1週間で復帰している人が多いです。
4. FESS(FED)が「向いている方」と「注意が必要なケース」
FESSは優れた手術ですが、全ての症例に適しているわけではありません。
- FESSが良い適応となるケース
- 片側の足に強い痛みやしびれがあり、MRIでヘルニアがはっきり確認できる。
- 薬物療法やブロック注射などの保存療法で改善が見られない。
- 注意が必要なケース(従来の手術が適している場合)
- 背骨の不安定性(すべり症など)を伴う。
よくあるご質問(Q&A)
Q:仕事復帰はいつから可能ですか?
A:デスクワークやテレワークなどの事務仕事であれば、退院直後から再開可能です。
ただし、FESS(FEL)は体への負担が少ないとはいえ、手術直後は長時間の着席で腰に重だるさや痛みが出ることがあります。最初の1週間程度は、こまめに体勢を変えるなど、腰の様子を伺いながら仕事量を調整してください。
また、力仕事や腰に負担のかかる重労働については、急に再開するのではなく、最初は軽い作業から始め、徐々に慣らしていくイメージで段階的に復帰することをお勧めしています。目安としてコルセットの外れる手術後4-6週間程度で復帰する方が多い印象です。
※回復のスピードには個人差があります。診察時に腰の安定度を確認しながら、その都度最適なアドバイスをさせていただきます。
Q:手術に伴う合併症のリスクと発生率を教えてください。
A:FESS/FEDは低侵襲な手術ですが、外科的処置である以上、以下のリスクが稀に起こり得ます。
1. 血腫(けっしゅ)による神経圧迫(発生率:約0.1〜0.5%程度)
手術した場所に血液が溜まり、塊(血腫)となって神経を圧迫することです。
- 特徴: 術後数時間〜数日以内に足の麻痺や激痛が出ることがあります。
- 対策: FESSは出血が極めて少ない手術ですが、万が一発症し神経症状が強い場合は、緊急で血腫を取り除く処置が必要になることがあります。
2. ヘルニアの再発(発生率:約3〜5%程度)
手術で取り除いた部位に、再び椎間板の中身が飛び出してしまうことです。
再発してしまった場合は痛み次第ですが基本的には保存療法から行うことをお勧めしております。
- 特徴: 手術の手技ミスではなく、椎間板の傷が塞がる前に過度な負荷がかかることで起こります。
3. 神経損傷(発生率:0.1%未満)
手術中に神経を傷つけてしまい、足の麻痺やしびれが悪化するリスクです。内視鏡で神経を拡大して確認しながら精密に操作を行うため、リスクは極めて低く抑えられています。
4. 硬膜損傷・髄液漏(発生率:約1〜2%程度)
神経を包んでいる膜(硬膜)が傷つき、中の液体(髄液)が漏れることです。手術中に修復が必要かどうか判断し必要であれば内視鏡ではなく直視下手術に変更します。
5. 感染症(発生率:0.1%未満)
傷口から細菌が入ることです。FESSは傷口が約8mmと小さいため、従来の切開手術(約1〜2%)に比べて感染のリスクは劇的に低いのが特徴です。
6. 有症状の深部静脈血栓症(発生率:0.1%未満)
いわゆる「エコノミークラス症候群」です。FESSは術後の痛みが軽く、手術当日から歩行(早期離床)が可能なため、このリスクを最小限に抑えることができます。
その他よくあるご質問(Q&A)はこちらでご紹介しています。
5. 脊椎外科の進化を、一人でも多くの患者様へ
脊椎外科の分野は日進月歩であり、かつては大きな負担が避けられなかった手術も、今では内視鏡を用いて最小限の負担で提供できるようになりました。
私がこのFESS(全内視鏡下脊椎手術)という分野を深く学んできたのは、「痛みに苦しむ時間を、一日でも短くして差し上げたい」という一心からです。この技術は、患者様が再び笑顔で歩き出し、大切な日常を取り戻すためにあります。
私はこれからも、進化し続ける脊椎外科医療の恩恵を、一人ひとりの患者様に誠意を持って届けてまいります。「もう治らない」と諦めてしまう前に、まずはFESSという選択肢があることを知っていただければ幸いです。
私の診察やFESS手術のご相談は、さいたま記念病院にて承っております。
電話でのみ予約を承っております。なお紹介状を持参された方が待ち時間が少なく済みます。
さいたま記念病院 (048-686-3111)
文責 油井 充(日本整形外科学会 脊椎内視鏡手術 技術認定医3種)