脊柱管狭窄症とは:なぜ「歩くと足がしびれる」のか
脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が、加齢による骨の変形や靭帯の肥厚によって狭くなる病気です。
- 最大の特徴「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」:
歩き始めは平気でも、しばらくすると足にしびれや痛みが出てきたり、足が重くなってきたり感覚がなくなってきて歩けなくなり、少し休む(前屈みになる)とまた歩けるようになる症状です。 - なぜ前屈みが楽なのか?:
前屈みになることで、一時的に脊柱管が広がり、神経への圧迫が緩和されるためです。スーパーのカートを押したり、自転車に乗ったりするのが楽なのもこのためです。
脊柱管狭窄症の主な症状と進行
- 下肢のしびれ・痛み: お尻から足先にかけて電気が走るような痛みや違和感。
- 歩行困難: 連続して歩ける距離が徐々に短くなっていきます。
- 重症化のサイン: 足の力が入りにくい(脱力感)、排尿・排便の異常、安静にしていてもしびれが強い場合は早めの受診が必要です。
なぜ足やお尻に症状が出るのか — 脊柱管狭窄症のしくみ
神経は、脳から背骨の中(脊柱管)を通って足先までつながっています。その途中で神経が圧迫されると、圧迫された場所より先の足やお尻に、痛み・しびれ・力の入りにくさが出ます。
「腰部脊柱管狭窄症」という病名は、腰部(腰の)+脊柱管(馬尾神経の通り道)+狭窄症(狭くなる病気)に分けられます。つまり、腰の神経の通り道が狭くなる病気です。狭くなる一番大きな原因は、背骨の後ろ側にある黄色靱帯(おうしょくじんたい)が厚くなることです。
脊柱管狭窄症の主な原因
大部分は加齢に伴う変化です。年齢とともに黄色靱帯が厚くなったり、骨が変形したりして脊柱管が狭くなり、中を通る馬尾神経や神経根が圧迫されて症状が出ます。背骨のずれ(すべり症)が加わって狭くなることもあります。
診断の方法
まず問診と神経学的な診察で、どの神経が症状の原因になっているかを推定します。そのうえで、レントゲン(背骨の並びや変形)、MRI(神経や脊柱管の狭まり具合を詳しく確認できる中心的な検査)、CT(骨の形の評価)などで総合的に診断します。必要に応じて、神経ブロック注射で原因となっている神経を確かめることもあります。
治療の進め方
治療は段階的に進めます。基本は①内服薬・リハビリ → ②神経ブロック注射 → ③手術の順で、多くの方はまず手術をせずに保存療法から始めます。ただし、足の力が入りにくい・排尿や排便に支障が出るといった神経のマヒがある場合は、順番にこだわらず早めに手術をおすすめすることがあります。当院でも、いきなり手術をすすめることはありません。
手術の種類
手術は、神経の圧迫を取り除く「除圧術」と、背骨のぐらつきを安定させる「固定術」に大きく分かれます。当院で行っている主な術式は、FEL(全内視鏡下椎弓形成術)、椎弓切除術、椎体間固定術、PETLIF(全内視鏡下椎体間固定術)、OLIFなどです。内視鏡手術がすべての方に最適とは限らないため、背骨のぐらつきが強い場合などは固定術をおすすめすることもあります。病状に応じて、安全で、困っている症状を最大限取り除ける方法を一緒に考えます。
当院が提案する低侵襲治療:FESS(全内視鏡下脊椎手術)
従来の「大きく切開する手術」に不安を感じ、痛みを我慢し続けている患者様が多くいらっしゃいます。私は、「自分や家族が受けたい治療」として、最も身体に負担の少ないFESS(フェス)を専門としています。
脊柱管狭窄症に対するFESSのメリット
- 傷口はわずか約1cm:
1cm程度の小さな切開から内視鏡を挿入します。 - 筋肉や組織を傷つけない:
従来の顕微鏡手術やMEDシステムよりもさらに細い内視鏡を使用するため、周囲の正常な筋肉や骨を削る量を最小限に抑えられます。 - 早期の社会復帰(入院期間が短く済む傾向があります):
出血が少なく、術後の痛みも少ない傾向があるため、ご高齢の方や早期に仕事復帰したい方にも向いています。
手術の考え方:脊柱管の「広さ」を再構築する
手術では、神経を圧迫している原因(分厚くなった靭帯や、飛び出した骨)を内視鏡で確認しながら精密に取り除きます。脊柱管の本来の広さを取り戻すことで、神経の血流を改善し、神経の回復を促します。
この病気についてさらに詳しく
手術の一般的な説明だけでなく、実際の術式の詳細や、手術で「治る症状」と「残りやすい症状」といった率直な情報もご用意しています。あわせてご覧ください。
手術後に痛み・しびれが残ったら
手術で神経の圧迫を取り除いても、痛みやしびれが残ることがあります。また、手術の対象にならない慢性的な腰痛もあります。そうした痛みに対して、近年は脊髄刺激療法(SCS)という選択肢が広がっています。
メッセージ:諦める前に「脊椎内視鏡」という選択肢を
「歳だから仕方ない」と諦める必要はありません。最新の内視鏡技術を用いれば、身体への負担を最小限に抑えながら、再び自分の足でしっかりと歩ける喜びを取り戻すことが可能です。
「FESSはすべての患者様に適応できるわけではありません。脊椎の状態によっては従来法が適している場合もあります。私は『脊椎内視鏡下手術・技術認定医』として、それぞれのメリット・リスクを十分に説明し、納得いただいた上で最適な治療を選択しています。」
私の診察やFESS手術のご相談は、さいたま記念病院にて承っております。
電話でのみ予約を承っております。なお紹介状を持参された方が待ち時間が少なく済みます。
さいたま記念病院 (048-686-3111)
文責 油井 充(日本整形外科学会 脊椎内視鏡手術 技術認定医3種)
手術のリスク・合併症について
どんな手術にも、一定のリスクがあります。脊椎の手術で起こりうるものとして、感染、出血や血腫、神経の損傷、硬膜の損傷(髄液のもれ)、血栓症、麻酔に伴う合併症などがあります。また、椎間板ヘルニアでは再発、固定術では隣り合う背骨への負担などが起こることもあります。いずれも頻度は高くありませんが、ゼロではありません。
当院では、手術の前にメリットだけでなくリスクや起こりうる合併症も包み隠さずご説明し、納得いただいたうえで手術を行うことを大切にしています。「手術で治ること」と「手術でも残りやすいこと」の両方を、正直にお伝えします。
ご相談・ご予約
「そろそろ手術を考えた方がよいか」など、迷われている段階でのご相談・セカンドオピニオンも承ります(さいたま記念病院 整形外科)。