「手術を受けたのに、足のしびれや腰の痛みが残ってしまった」「いろいろ試したけれど腰痛が良くならない。かといって手術の対象にはならないと言われた」——そんな行き場のない痛みに悩む方に、近年あらためて注目されているのが脊髄刺激療法(SCS:Spinal Cord Stimulation)です。

脊髄刺激療法(SCS)とは

SCSは、背骨の中の神経(脊髄)のすぐ近くに細い電極(リード)を置き、やさしい電気刺激によって痛みの信号を脳に伝わりにくくする治療です。体内にペースメーカーのような小さな装置を入れ、痛みを和らげます。薬を増やし続けるのではなく、痛みの伝わり方そのものにはたらきかけるのが特徴です。

日本では難治性の慢性疼痛に対する治療として保険が認められており、装置や手術にも健康保険が適用されます。

効果の目安として、一般的に約3分の2(3人に2人)の方で、痛みやしびれが半分以下に軽くなったと報告されています。(効果には個人差があります。)

SCSの大きな特徴:「試してから決められる」「元に戻せる」

SCSがほかの手術と大きく違うのは、次の2点です。

まず、効果を試してから本格的に導入できること。最初に電極だけを入れて数日間刺激を体験し(試験刺激・トライアル)、「痛みが十分に楽になる」と確認できた方だけが、装置の植え込みに進みます。

そして、神経を削ったり壊したりする治療ではないこと。刺激の強さは後から調整でき、合わなければ装置を取り出して元に戻すこともできます。体への負担が少なく、後戻りのきく治療といえます。

こんな痛みに、適応が広がっています

SCSはもともと、神経が原因の痛み(神経障害性疼痛)に有効とされてきました。近年は、次のような痛みにも選択肢として検討できるようになっています。

腰椎の手術後に残った痛みやしびれ(脊椎手術後症候群)
手術で神経の圧迫は取れても、長く圧迫されていた神経のダメージによって、しびれや痛みが残ることがあります。こうした「手術後に残った痛み」に対して、SCSはこれまでも豊富な実績があります。

これまで手術の対象にならなかった、いわゆる慢性腰痛
近年、高頻度刺激などの新しい刺激方法が登場したことで、従来はSCSが効きにくいとされていた「腰そのものの痛み」にも効果が期待できるようになってきました。これにより、手術の適応がない慢性腰痛や、手術をしても取り切れなかった腰痛にも、選択肢として検討できるケースが増えています。

そのほかの神経障害性疼痛
坐骨神経痛が長く続くタイプの痛みなどにも用いられることがあります。

※どの痛みにSCSが向いているかは、症状や検査結果によって異なります。すべての方に適応があるわけではなく、効果にも個人差があります。適応は診察で慎重に判断します。

治療の流れ

SCSは大きく2段階で進みます。

① 試験刺激(トライアル):細い電極を入れて、数日間、実際に刺激を体験します。痛みがどれくらい楽になるかを確かめる大切な期間です。

② 本植込み:試験刺激で十分な効果が確認できた場合に、刺激装置を体内に植え込みます。効果を確かめてから進めるため、「入れてみたけれど効かなかった」というミスマッチを避けやすいのが利点です。

費用について

SCSは健康保険の対象で、高額療養費制度が適用されることが多い治療です。自己負担の目安については、受診時にご説明します。

当院での治療とご相談

当院では、油井医師自身が、試験刺激(トライアル)から装置の植え込みまでを一貫して行います。手術後に残った痛み・しびれや、これまで手術の対象にならなかった慢性腰痛でお悩みの方も、あきらめる前に一度ご相談ください。
ご相談・受診は、さいたま記念病院 整形外科にて承っております。
代表:048-686-3111 / 外来予約:048-793-4874

油井 充
油井 充(ゆい みつる)
脊椎外科医 | 日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定医(第3種)
FESS(脊椎内視鏡手術)を専門とし、体に負担の少ない低侵襲治療を追求しています。