私の外来では最近、「おしっこの出が悪くなった」「尿意が鈍くなった気がする」という訴えで受診される方が増えています。脊柱管狭窄症があることを知っている方は「これは腰が原因なのか」と心配されることが多く、確かに脊柱管狭窄症による膀胱直腸障害という概念はあります。ただ、少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。
膀胱直腸障害は、脊柱管狭窄症の中でも「最後に来る症状」です
脊柱管狭窄症による膀胱直腸障害は、神経への圧迫がかなり進んだ段階で現れる症状です。言い換えれば、もし膀胱直腸障害が脊柱管狭窄症によるものであれば、それ以前に下肢の症状がかなり重くなっているはずです。目安として、間欠性跛行(少し歩くと足が痛くなって休まないといけない状態)が5分未満になっているほどの重症度です。また、脊椎由来であれば、排尿・排便の問題と同時に、陰部(会陰部)の感覚が鈍くなることが多いです。
排尿障害のみで陰部の感覚が正常な場合は、まず泌尿器科へ
ここが最もお伝えしたい点です。脊柱管狭窄症がある方でも、下肢の症状がそれほど強くない、あるいは陰部の感覚は正常という場合、排尿の問題の原因は脊椎ではない可能性の方が高いと私は考えています。男性であれば前立腺肥大、過活動膀胱など、泌尿器科的な疾患が原因であることが多いからです。
「膀胱直腸障害は不可逆性」という言葉を聞いて不安になる方もいらっしゃいますが、それは脊椎が原因の場合の話です。排尿障害が泌尿器科的な原因であれば、適切な治療で改善することがほとんどです。脊柱管狭窄症があるからといって、排尿の問題をすぐに脊椎のせいにするのは早計だと思っています。
受診の順序についての私の考え
私が患者さんにお伝えしている順序は、まず泌尿器科で過活動膀胱や前立腺肥大がないかを確認していただき、それでも説明がつかない場合に脊椎との関連を検討する、というものです。下肢の症状がまだ軽く、陰部の感覚も正常であれば、最初の受診先は泌尿器科をお勧めします。
もちろん、間欠性跛行が強くなってきた、陰部の感覚が鈍い、排尿と排便の両方に問題がある、という場合は脊椎専門医への受診を早めることをお勧めします。いずれにせよ、「脊柱管狭窄症があるから神経のせいに違いない」と自己判断せず、適切な科を受診していただくことが大切です。
油井 充(脊椎脊髄外科専門医・脊椎内視鏡下手術・技術認定医[3種─経皮的内視鏡下脊椎手技])