腰椎椎間板ヘルニアとは:なぜ激しい痛みが出るのか

椎間板は、背骨の間でクッションの役割を果たしています。この椎間板の中身(髄核)が外に飛び出し、神経を圧迫してしまうのが「腰椎椎間板ヘルニア」です。

  • 主な症状: 激しい腰痛に加え、お尻から足にかけての鋭い痛みやしびれ(坐骨神経痛)。
  • 特徴: 前かがみの姿勢や椅子に座る動作で痛みが強まることが多く、日常生活に大きな支障をきたします。

自然に治る?それとも手術が必要?

多くのヘルニアは、安静や薬物療法、ブロック注射などの「保存療法」で数ヶ月以内に改善します。しかし、以下のような場合は手術を検討すべきサインです。

  • 足の力が入りにくい(麻痺がある)。
  • 排尿・排便に支障が出ている。
  • 激しい痛みが続き、仕事や日常生活に戻れない。

なぜ痛みやしびれが出るのか — 椎間板ヘルニアのしくみ

神経は、脳から背骨の中を通って足先までつながっています。その途中で神経が圧迫されると、圧迫された場所より先の足やお尻に痛み・しびれが出ます。
「腰椎椎間板ヘルニア」という病名は、腰椎(腰の)+椎間板(背骨のクッション)+ヘルニア(飛び出すこと)に分けられます。クッションである椎間板の一部が飛び出し、その近くを通る神経の根(神経根)を圧迫することで、腰から足へと走る痛みが起こります。
脊椎を専門とする立場では、腰だけの痛みではなく、お尻から足に放散する痛みやしびれがあることが椎間板ヘルニアの典型と考えます。

椎間板ヘルニアの原因

喫煙や重労働、遺伝的な要素など、さまざまな要因が関係すると報告されていますが、なぜ発症するのか、はっきりした原因は分かっていない部分が多いのが実情です。関連がはっきりしているのは喫煙で、予防や再発防止の観点からも禁煙が望まれます。

診断の方法

問診と神経学的な診察で症状の原因となっている神経を推定し、レントゲンやMRIなどの画像で椎間板の飛び出し具合や神経の圧迫を確認します。必要に応じて、神経ブロック注射で原因部位を確かめることもあります。

治療の選択肢(保存療法から手術まで)

治療は段階的に進めます。基本は①内服薬・リハビリ → ②神経ブロック注射 → ③手術などの順で、多くの椎間板ヘルニアは数か月以内に保存療法で改善します。
神経ブロック注射とは、針の先を神経の近くまで進め、炎症を抑える薬などを注入する治療です。
手術以外の選択肢として椎間板内酵素注入療法(局所麻酔で椎間板内に薬を注射し、ヘルニアの一部を分解する方法)もあります。手術より即効性は劣りますが体への負担が少なく、ブロックの効果が一時的で手術までは考えていない方に向いています(※薬剤の供給状況により実施できない時期があります)。
ただし、足の力が入りにくい・排尿や排便に支障が出るといった神経のマヒがある場合は、順番にこだわらず早めに手術を検討します。

手術方法と傷の大きさ(LOVE法・MED法・FED法)

椎間板ヘルニアの手術にはいくつかの方法があり、傷の大きさや体への負担が異なります。代表的なものは、LOVE法(従来法)、MED法、そして内視鏡を用いるFED法です。下の図は、それぞれの傷の大きさを比べたものです。

手術方法による「傷の大きさ」の違い 腰椎椎間板ヘルニアの手術(実際の傷の長さを比較) 0 2cm 4cm 6cm 8cm 10cm LOVE法 傷 5〜10cm 術直後の腰痛:あり / 入院 10〜14日 MED法 傷 16〜18mm 術直後の腰痛:少ない / 入院 4〜7日 FED法 傷 8mm(内視鏡) 術直後の腰痛:限りなく少ない / 入院 3〜4日 FED(内視鏡手術)は傷が8mm。体への負担が少なく、入院期間も短い傾向があります。 ※数値はさいたま記念病院 整形外科の掲載情報に基づく代表値。回復には個人差があります。適応は診察で判断します。

手術を受けるタイミング

手術のタイミングは患者さんによってさまざまです。急に強い痛みが出て動けない場合は早期に手術することもあれば、痛みが出たり和らいだりを繰り返し、数年悩んでから手術を決める方もいます。緊急性がなければ、手術する時期は基本的にご本人に決めていただいています。ただし、痛みが6か月以上続くと手術でも改善が乏しいという報告もあるため、目安として痛みが出てから3〜6か月ほどでの手術をおすすめしています。マヒなど緊急性がある場合は、こちらから手術を強くおすすめすることがあります。

手術は危険?車椅子になりませんか?

どんな手術も100%安全ということはなく、ヘルニアの再発や血腫といった合併症が一定の確率で起こり得ます。ただし、腰の手術が原因で車椅子生活になった患者さんを、これまで診たことはありません。リスクとメリットの両方を十分にご説明したうえで、納得して選んでいただくことを大切にしています。

当院の強み:FESSによる「最小侵襲」ヘルニア摘出術

私は、患者様の身体への負担を極限まで減らすために、FESS(全内視鏡下脊椎手術)によるヘルニア摘出を専門としています。

従来の顕微鏡手術やMEDシステムとの違い

  • 傷口は約8mm: 1cmに満たない小さな切開から、直径わずか数ミリの内視鏡を挿入します。
  • 筋肉を剥がさない: 筋肉の隙間からアプローチするため、術後の腰の重だるさや痛みが少なくなる傾向があります。
  • 回復が早い傾向: 身体への負担が小さいため、術後は早期に歩けることが多く、入院期間も短くなる傾向があります(回復には個人差があります)。
比較項目従来の手術(顕微鏡下など)最新のFESS手術
傷口の大きさ約3〜5cm程度約8mm
筋肉へのダメージ筋肉を骨から剥がす必要がある筋肉を分けるだけで損傷が極小
術後の痛み傷口や筋肉の痛みが数日続く痛みが少ない傾向で、早期に歩けることが多い
入院期間約1週間〜10日前後2泊3日
社会復帰(事務職の場合)数週間〜1ヶ月程度数日〜1週間程度(早期復帰)
デメリット身体への負担が比較的大きい高度な技術と専用設備が必要

この病気についてさらに詳しく

実際の術式の詳細や、「手術をせずに治せるのか」といった判断に役立つ情報もご用意しています。あわせてご覧ください。

手術後に痛み・しびれが残ったら

手術で神経の圧迫を取り除いても、痛みやしびれが残ることがあります。また、手術の対象にならない慢性的な腰痛もあります。そうした痛みに対して、近年は脊髄刺激療法(SCS)という選択肢が広がっています。

専門医としてのこだわり:神経を守り、痛みを取り除く

手術では、高精細な内視鏡で神経とヘルニアを直接確認しながら、圧迫している原因だけを精密に取り除きます。「自分や家族が受けたい治療」を形にした手法で、安全性を第一に考えて取り組んでいます。


私の診察やFESS手術のご相談は、さいたま記念病院にて承っております。

電話でのみ予約を承っております。なお紹介状を持参された方が待ち時間が少なく済みます。

さいたま記念病院 (048-686-3111)

文責 油井 充(日本整形外科学会 脊椎内視鏡手術 技術認定医3種)

手術のリスク・合併症について

どんな手術にも、一定のリスクがあります。脊椎の手術で起こりうるものとして、感染、出血や血腫、神経の損傷、硬膜の損傷(髄液のもれ)、血栓症、麻酔に伴う合併症などがあります。また、椎間板ヘルニアでは再発、固定術では隣り合う背骨への負担などが起こることもあります。いずれも頻度は高くありませんが、ゼロではありません。

当院では、手術の前にメリットだけでなくリスクや起こりうる合併症も包み隠さずご説明し、納得いただいたうえで手術を行うことを大切にしています。「手術で治ること」と「手術でも残りやすいこと」の両方を、正直にお伝えします。

ご相談・ご予約

「そろそろ手術を考えた方がよいか」など、迷われている段階でのご相談・セカンドオピニオンも承ります(さいたま記念病院 整形外科)。

油井 充
油井 充(ゆい みつる)
脊椎外科医 | 日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定医(第3種)
FESS(脊椎内視鏡手術)を専門とし、体に負担の少ない低侵襲治療を追求しています。