脊柱管狭窄症と診断されたとき、多くの方が「手術は必要なのか」と悩まれます。結論から言うと、すべての方に手術が必要なわけではありません。症状が軽く、日常生活に大きな支障がない場合や、保存療法で改善傾向にある場合は、手術を急ぐ必要はありません。

保存療法で対応できるケース

薬やリハビリ、ブロック注射で症状が落ち着いてきている方は、そのまま経過を見ることが一般的です。脊柱管狭窄症は命に関わる疾患ではなく、痛みや歩行距離の制限があっても日常生活を送れている方は多くいらっしゃいます。保存療法で症状をうまくコントロールできているのであれば、手術を急ぐ理由はないと私は考えています。

手術を検討するタイミング

一般的に、1回に歩ける距離が5〜10分以下になってきた、薬やリハビリを続けても改善しない、という状態が目安となります。痛みが強く夜眠れない、薬をやめるとすぐ悪化するという状態も、手術を検討するサインの一つです。

足に力が入りにくい、つまずきやすい、尿・お通じが出にくいといった症状が出ている場合は、より早めの受診が必要です。これらは神経障害が進んでいるサインであり、場合によっては緊急的な対応が必要になります。

手術のタイミングについての私の考え

一つ正直にお伝えしたいことがあります。脊柱管狭窄症は、手術が遅くなればなるほどまた症状が重症になればなるほど術後に症状が残りやすくなる傾向があります。私がこれまで多くの患者さんの術後経過を見てきた印象では、上記のような症状が1年とか続いている人より1〜2ヶ月続いている段階で手術を受けた方が、術後の回復が比較的良好なことが多いと感じています。これは一般的な手術のタイミングより少し早めではありますが、数千人の患者さんの術後経過を見てきた上での私なりの結論です。

たとえば、15〜20分程度で足の痛みやしびれで休まないといけなくなった段階で手術を検討していただくことも、私はお勧めしています。なぜなら、5分しか歩けない状態まで悪化してから手術をしても、術後に15分程度には改善するものの、1時間歩けるようにはならないケースが結構あるからです。「まだ15分は歩けるから様子を見よう」という判断が、結果として術後のゴールを下げてしまうことがあります。

特に「足の裏に砂利を踏んでいるような感じ」「紙が1枚挟まっているような違和感」という症状は、手術後に最も残りやすい症状の一つです。症状が出てから1年以上経っている場合、この違和感が手術後も改善しない可能性が高くなります。一方、3〜6ヶ月以内であれば改善の可能性は十分あります。この点については、患者さんにどこまでの改善を期待するかを確認した上で、判断していただくようにしています。

どう判断すべきか迷っている方は、ぜひ外来でご相談ください。材料を一緒に整理した上で、最終的にどうするかはあなた自身のペースで決めていただければと思います。

油井 充(脊椎脊髄外科専門医・脊椎内視鏡下手術・技術認定医[3種─経皮的内視鏡下脊椎手技])

油井 充
油井 充(ゆい みつる)
脊椎外科医 | 日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定医(第3種)
FESS(脊椎内視鏡手術)を専門とし、体に負担の少ない低侵襲治療を追求しています。